「良い蓋物だね。」知里恵美里は目の前に置かれた菓子器の蓋を手に取りひっくり返す。銹絵の薄。枯れた風情。ずっしりとした質感。乾山はこうでなくてはならない、と思う。裏を見やれば南蛮じみた菱の入った文様が目に入る。菓子は未だに葛饅頭だ。恵美里の一畳と、板敷、そ ...

たまにはお茶の話でもしましょうか。まずは一服差し上げましょう。菓子は着せ綿ですね。もう九月の重陽です。わしゃわしゃした頭の花を見ているとフジバカマを思い出します。そのお茶碗ですか。すいません。暑苦しいですね。本当に。夏だというのに筒茶碗。私は何もかもお茶 ...

「いいねえ、やっぱり、富士は。」彼は眼を細めて空を仰ぐとこう言いました。うん、うんとうなずいている彼はようやく富士山にやってきたという気になったのでしょう。太宰はこんな風に御坂峠で言っていたんだがね、と自慢気です。かく言う私も普段は遠目に見るばかりの富士 ...

萩(玉川町)一日遅れました。処暑です。暑い昼を越して薄闇になると秋虫が鳴いて少し涼しい風が入ってきます。おや、誰でしょう。蝉です。事を全てなし終えた力無い蝉が外で網戸を叩いてのたうち回っています。私には何もすることが出来ません。数分おきにねじを巻くような ...

芙蓉(片町)秋立つ…というのは名ばかり。秋らしさといえば七草がそろそろ咲きそろってくるぐらいか。むしろこれからが夏一番の暑さだ。戸の外は灼熱。内に居ても氷菓子がほしい。夜は寝苦しいが故に長く感じられる。寝ようにも蝉が鳴き続けてまるで寝られもしない。…そん ...

大暑に合せて出された大氷(上近江町)一番暑い大暑の頃。でももっと暑くなるのがこれからだ。猛暑はまだ入り口に過ぎない。北陸は仮出所の身なれどいよいよ梅雨明け。さるすべりも咲いて主役は出揃ったところだ。夏を乗り切る術は色々な場所に見ることが出来る。近江町市場 ...

次に登る山はきっと確実だった。そうだ 白馬にしようと。先日白山を登ってみて思ったことがある。こういう山は他にないだろうかと。白山のように華があって温泉があって高山植物がある。実は白山で見た高山植物の数々には圧倒されたが 思いのほか種類は豊富ではなく少々肩 ...

新たなる一日の誕生の瞬間を兼六園にて。最近老人の症状としてよく夜中に目が覚める。老人というよりも老いた趣味の人と言うべき自分なのだが其ういう趣味の持ちたる結果として寝られない眠りが浅いという症状に直面しているのだろうか。今日も3時に目が覚めた。床に就いてい ...

7月10日。霊夢から目覚めて見てみれば午前3時であった。夢とやらは確かに見たのだがもう覚えていない。ただ覚める間際に確かな女のような男のような何か生き物のような鳴き声を聞いた。其れは実にどうでも良い物音の錯覚だったかもしれない。だが私には来るべき行動を起こす ...

白木槿(長町)木槿花のお目見えし蝉の所々で鳴いて一層夏は活気づいてきている。雨間の天気は雲に壮大さを感じるし暑さにも拍車がかかり氷菓子の欠かせぬ具合である。未だ不安定に雨が降ったりやんだりしている。夜に豪と降って朝にも少し降って午後にもなんとなく傘が手放 ...

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