上野の薮蕎麦。うどんのような田舎蕎麦を食した後で、之を食べに行きたくなった。曰く、噛まない蕎麦は、有り難い。辺境の太麺蕎麦を愛好するものは、よほど畜牛の如く大らかなのである。喰う間も惜しい人間は歯を使役する暇など無いのだ。蕎麦の出るまで7分、店を出るまで ...

「肘折は良い」草津からの帰り、乗合で隣に乗り合わせた人と温泉談議に耽った際に、そう言われた。肘折温泉、といえば山形の山中にある湯治場だ。その時はあまり知らなかったが、効き湯の代表格である。私はその名を出してもらった代わりに津軽の嶽温泉を勧めた気がする。ま ...

今日は久々の根津青山の御邸址詣りでした。根津美術館では現在 丸山応挙展が催されています。写実をよくし、近世と近代の架け橋を担った徳川藩政後期の絵師、応挙。最近は伊藤若冲が人気なせいか、同時代を生き同じく革新的な作風だった彼にも注目が集まっているのではない ...

最近はすることが無い。かといって仕事は出来ない病気の身。毎日は灰色のように無味である。でも近頃は色が着いてきた。一日喫茶して本を読むだけ。人と逢うことは稀である。他人を見下す趣味が出来た。一番伊達なのは私である。考えることは死についてだけ。目の前の生に全 ...

(無著立像 興福寺)10月15日 陰鬱な冬晴れの日 日本髪の似合う琉球人、黒島結菜の日 血塗られた壁の日自分は人間として生きる資格があるのか。時々そう思う。生きる資格。たぶんそれは考え過ぎた人間が求めるものだろう。楽天家にとって生きることは自明であり、疑 ...

私という人間は茶道によって形成されました。私は茶道によって自分というものを知りました。茶道というのは素晴らしいものです。同時に良くないものでもあります。茶道は人を育てもするし、破滅させもするからです。茶道の深淵を本当に知るとき、だれもがその業の深さに慄然 ...

当所をご覧の皆さまへこのたびはお越し頂きましてありがとうございます。ずいぶん前から此所にお越しいただいている方も中にはおられることと思います。私です。マボタン亭主であります。今日私は皆さまに対して重要なお知らせをいたそうと思い、この記事を投稿します。皆さ ...

(深山吾亦紅 先月、立山室堂にて)引っ越して半年、私はある「良くない変化」に気づきました。金沢という町は私にとって何より多くの魅力を備えた場所として立ち現われました。此所を私は何処よりも住む価値のあるべきものとして信じ、実際移住したのです。本当に半年間、 ...

秋の涼しい風が吹いています。空を見上げれば気分屋ないわし雲が浮かんでいました。もう一番暑い時期は終わってしまったんだな、とこの雲を見て悟ります。白露、とは名の通り、冷たい空気のせいで草の葉に露がしたたるのです。まだ其処まで寒くないので想像できませんけど、 ...

「良い蓋物だね。」知里恵美里は目の前に置かれた菓子器の蓋を手に取りひっくり返す。銹絵の薄。枯れた風情。ずっしりとした質感。乾山はこうでなくてはならない、と思う。裏を見やれば南蛮じみた菱の入った文様が目に入る。菓子は未だに葛饅頭だ。恵美里の一畳と、板敷、そ ...

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