居の窓の向こうには白雪を被った山が見える。私はこの山が見えるから居を此所に定めた。夕刻になると雪が反射してきらめく。定まらない天気の金沢からでも日が差せばこの山が定かになる。名峰白山である。白山は金沢と由縁が深い。金沢は観音菩薩に抱かれた町である。それは ...

千代保桜という桜がある。あるというか私が勝手に名づけただけだ。かなりの早咲きで染井吉野よりも十日以上開花が早い。花びらが殊に内すぼみになっていておちょぼ口を連想させるのでおちょぼ桜と言う事にしている。今年は大変に開花が早かった。去年は20日ごろに満開を迎 ...

貝母がちょうど良く出てきた。寒芍薬は外人とは思えぬほど茶花に合う。金鳳花の仲間だから深山金鳳花の冬版みたいな感じだろうか。朗らかな春。朗らかな冬。もっと季節が進むと華やかな春になる(だが実は最も憂鬱が非道い時期である)。和菓子は金沢の「中島」のものを用い ...

今回金沢に行ってきたのは引っ越しの為であった。東京という場所が心底嫌になりどこか遠方に憬れていた。永く移住したいと思っていた。東京は俗人情 しがらみである。人は皆自然(じねん)せせこましくなる。之は東京の病である。誰もが此所にいると罹患する。無論私もその ...

川上不白が草庵を構えていたのはこの辺りだったかと思いながら派手な朱塗りの楼門を潜る。江戸千家は神田明神が興りである。如心斎の門弟の不白はここに暮らしていた。今では池之端に江戸千家はある。青い空を背に梅は日を受ける。受けた花弁は春の酒の香りを皆に届ける。梅 ...

鎌倉は梅である。近年の北鎌倉はだいぶその風情を変えつつある。もう行くこともあるまいと思っていたが東京に適当な観梅ところが無いから久々に足を運んだ。やはり新しい建物が増えた。古い趣或る民家は次々と無くなる。北鎌倉の風情の牙城だった鎌倉街道沿いの藁ぶき屋根の ...

今日の稽古には椿餅を用いた。裏葉のほうにひっくり返されて抹茶の泡のような色具合に照葉の肌艶の良さがよく似合っている。上の葉も下の葉も裏葉が外を向いている。これは少々風変わり 作ったとらやの趣向によるものである。どの葉も随分と綺麗にできているものだと思う。 ...

1 着いてから四万と書いて「しま」と読む。この土地の不思議な名であった。私はここで療養してきたのだ。四万というのは数字である。その温泉の功徳の多さを表していると言える。昔から温泉とは神仏からのいただき物であったから。それと同時に四万は陸の内の「島」である ...

 寺を出て二人は甘味処で一休みをし 宿に戻り夕餉を待ちつつ内湯に浸かる。檜の香のする新しい湯屋からは絵画的な白砂利を配した庭園が見える。二人は大きな浴槽の端で足を浸して湯に体を慣らしながら戯れる。恵美里:ああ 気持ちいい。美衣奈:恵美里 手拭い。恵美里: ...

二人は寺の物に案内されて御堂へと這入る。堂宇の内は漆黒である。寺の者が火を燈すと明らかになるは荘厳な仏の世界。二人の女人は寺の者の招きに応じて内陣外陣の仕切りを超える。恵美里:つまり貴方は私たちであるがゆえに本尊の御顔を見せるのですね。此所は秘仏をお祀り ...

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