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(兼六園、法螺山からの景観)

金沢旅、一日目中編です。

中村記念美術館でだいぶ時間をかけた私はついに天下一の名園、兼六園へと足を踏み入れました。坂を上って随心坂口から入場。兼六園には七つもの入口があり、一回券を買えばその日は何度も再入場ができます。


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兼六園の地図。東側は高台に、西側は斜面に面しています。

かなり広い園内ですが、とりあえず1時間近くかけて一通り見てきました。「六勝」と称される宏大と幽水、人力と蒼枯、水泉と眺望もしっかり堪能しました。私はここにいく前「六勝を兼ねる」という松平定信の評価について半信半疑でした。しかし行ってみればそれが見事に並立していたのです。ここは備えることができないような相反する魅力を同時に持っているという稀有な庭園なのでした。ここに似た庭園に東京の小石川後楽園や六義園がありますが、それでも六勝すべては兼ね備えてはいません。改めて桁違いの庭園であることが分かりました。





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それでは庭園内の見どころを紹介していきましょう。

まずは必ず紹介される根上りの松。力強い根が顕になった兼六園の顔の一つです。前田家13代目斉泰が作らせたものです。




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園内を流れる辰巳用水。江戸時代の用水路としては唯一現役とされています。まちづくりだけでなく庭園にまでこの用水路は活躍しています。このあたりには初夏には菖蒲が咲き乱れ神仙のような景色が見られます。






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霞が池に面した巨大な唐崎松。ちょうど雪吊りが終わり、さらに豪快さが増したように見えます。近江八景「唐崎の夜雨」の唐崎の地から種子を持ち帰った松をここまで育てたそうです。




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小川にかかる雁行橋。確かに雁が群れを成してV字型に飛行する姿と似ています。近くの桜の紅葉も綺麗でした。



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巨大な霞池と蓬莱島。高台にこんな景色があるなんてびっくりです。




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夕顔亭とともに江戸時代の建造物である「内橋亭」。二つの建物の間に橋が架かっているところからこの名があります。年に一度の兼六園開放の際にお茶会がここで催され、その時には入ることができます。







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霞が池の「親不知」と呼ばれる部分。越後国の交通の難所・親不知の景色に似ていることからこの名があります。




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兼六園ならず金沢の象徴たるのがこの琴柱灯籠(ことじとうろう、本当はもっと難しい字です)。長さの違う二つの足がついた趣あるこの灯籠は存在感がとってもあります。この足の様が琴の弦を支える琴柱に似ていることからその名があります。雪見灯籠の亜流ではありますが、なんだかこの二本足のせいで全く別種のように見えてしまいます。





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兼六園の「噴水」。江戸時代後期に西洋を真似て作ったものですが、一切電気の力に頼らず斜面の高低差を利用して水が湧き上がるようになっています。





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西側の低地にある瓢池と海石塔、翠滝。六勝の内、蒼枯がよく感じられる苔むした石が見どころです。






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瓢池に面した藁葺きの茶室・夕顔亭です。安永3年(1774)の建築です。縁側に開放感のある、茶亭に近い大名好みな印象があります。使うのは藩主であるだけに、二つの入り口はどちらもにじり口ではなく貴人口。今回は見られませんでしたが、茶室内の透かし彫りには夕顔の形をしたものがあり、そこからこの茶室の名があります。



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茶室内部の夕顔の透かし彫りと全体。どちらも他所からの写真。四畳に次の間一畳がついた古田織部の燕庵形式ですが、全く違うのが戸口と彩光。奥の畳南側にあるはずのにじり口の代わりに、東・北の二方向から障子の貴人口がついています。点前座には三つも窓(しかも大きい)がついており、障子と合わせても「明るい」と言われた燕庵よりもはるかに明るいです。外からは瓢池と翠滝を見ることができ、いかにも大名好みの茶室です。今は陸続きですがかつては中島にあったそうで、「中島の茶屋」と呼ばれていました。




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夕顔亭前の手水鉢。ヤシ類の茎と化石化した根っこが一体化したという、相当珍しい手水鉢です。確かに切り株のようにも見えるし、石のようにも見えます。ただ名称は「竹根石手水鉢」。竹だと思われていたのでしょう。



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茶亭前の寸胴の「伯牙断琴の手水鉢」。中国の故事を元にした手水鉢です。京都・祇園祭には「伯牙山」という山鉾がありますが、その由来と同じで琴の名手・伯牙が自分の弾く琴を最もよく理解してくれる親友が死んだのを気に斧で琴を断って二度と弾かなかったという話です。





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瓢池の紅葉。1枚目奥には座敷も見えます。このあたりは兼六園でも最初に作られた部分であり、東側の霞が池よりも落ち着いた雰囲気があります。私は瓢池の眺望よりも、この瓢池の侘びた石の蒼枯のほうが好きです。




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栄螺山麓のイチョウの落ち葉。栄螺山からは霞池を一望することができます。







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また東側に戻ってきて、花見橋と紅葉。辰巳用水にかかる木造の橋です。





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園内北東にある山崎山からの紅葉。霞が池西にある法螺山と並び園内で最も高い場所です。



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兼六園南の石段。今は使われていない出入り口です。





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兼六園を名残惜しみつつも去り、隣接する成巽閣へ。前田家の奥方の住まいとして造営されたこの御殿は今も前田家の持ち物であり、兼六園とは敷地を別にしています。




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まずは特別公開の茶室・清香軒から。三畳台目の小間ながら、あまり堅苦しい感じのないところが奥方の御殿茶室らしくあります。内部は撮影禁止でしたが、係の方に「内露地は外ですよね」と道化をうって内露地だけ撮らせてもらいました。この内露地がまた見事でして、延段などの石を散りばめるだけでなく、小川まで通しています。これぞ金沢の内露地文化の粋だと思います。

前回金森宗和の内露地との比較について触れましたが、これをみると宗和の美意識との違いがさらによくわかる気がします。宗和の内露地には露地よりも矮小化された空間の演出が念頭に置かれていたのでしょう。一方の金沢茶室の内露地は雪避けという実用面から発達したものなのだと思います。金沢の家を見ていても、二日目に訪れたあめの俵屋本店の建築のように庇をわざわざ大きくとって来客への気遣いをしようという建築文化があります。この内露地もその延長と言えるでしょう。

左にはにじり口がありましたが、こちらはたいてい使われず、茶室の隣の書院から入っていたのだそう。



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これは他所からの写真ですが、清香軒の内部。奥の台目畳に炉が切ってあります。金沢茶室の特徴に触れたように、床の間は平たい板張りです。床柱には竹が使われており、天井にも丈竿の使用が見られます。全体として数寄を尽くした創意に溢れており、もっと知られていてもいいくらいの名茶席でありました。




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茶庭・飛鶴庭です。向こうは兼六園の敷地になっています。右奥には長方形の石段が見えますが、こちらは貴人の輿を置く場所であり、彼らはここから席入りしていました。




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ちょっと面白かったのがこちら。係員さんにこれはなんですかと聴いたら、手水鉢なのだそう。さすがの手水鉢も雪が降るとその重みなどでヒビが入ってしまうので、こうして藁で囲っておくのだそう。木々の雪吊りのみならず、石にもこうした配慮が必要だとは驚き。しかしこれも風情を感じさせます。


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こちらは一般公開の上階・群青の間。天井に群青を格子状に張っています。建築的にはかなり数寄屋であり、様々なところに工夫が見られます。特に左の間の上段には足を入れることのできる机があったり、棚の板が三角形に切られていたりとこだわりがあります。





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こちら上階、越中の間。こちらも数寄屋風であり、茶室に用いられる円窓や棚の工夫など、注目すべき点だらけです。



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成巽閣には群鶴庭の他に、もう二つも庭園があります。上は「万年青の緑庭園」、下は「つくしの緑庭園」です。どちらも落ち着きのある奥方の御殿にふさわしい庭園ですが、一方は緑、もう一方は紅葉の美しさがそれぞれ映えており、良い対照をなしていました。

次回は一日目後編(西田家、金沢城、県立美術館)をお送りします。

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おまけ・今季の初水仙。兼六園のお手洗いにて。うつむき加減のナルキッソスの耽美なこと。この花が好きな私はナルシストに違いない(ボヤキ)。