299

















今日は山梨、長野まで遠出してきました。親戚からもらったJRの「青春18きっぷ」の残り三日分を使い切るために久々に甲信地方へ行ってきました。一方では二年ぶりのお諏訪様詣で、もう一方ではこちらの世界で一番古い桜の木、神代桜を見るために、という目的があったのです。今回は神代桜についてお話しします。

最近私は「一本桜」というものに興味を持ち始めました。桜の数は多しと言えども、多くはソメイヨシノ。しかし少数は、昔からそこに在り続けてきた、人間を超える寿命を持つようなものもあります。そういった桜はことさら注目を浴び、一本桜として多くの人に感動を与えています。その代表格がいわゆる「五大桜」というものでありますが、三春滝桜を見てもわかるようにほかの桜とはけた違いの凄みを持っています。私も段々花を見るよりも木を見るほうがが好きになってきましたので、一本桜というもののすごさを知りたいなぁと思っていました。

今回は諏訪宮参詣の帰りがけではありましたが、ちょうど神代桜が8分ほどまで開花したという情報を前日につかんだため寄ってみることにしました。中央本線の「日野春」という何ともぽかぽかする名前の駅からタクシーで十分、神代桜のある実相寺に到着しました。お寺の裏に回り込むと、全く桜とは思えないほど巨大な木が姿を現します。これがその神代桜です。樹齢は実に2千年あると言われ、最古の桜とされています。神代桜はエドヒガンという種類でありますが、これは明治期のソメイヨシノ登場前では最も正統派の桜とみなされていただろうと思われます。またソメイヨシノの親の片方はこのエドヒガンであり、もう片方のオオシマザクラよりもその血がよくソメイヨシノに受け継がれている気がします。



295






























326
































神代桜はかつては多くの枝があったでしょうが、多くは折れたり壊死してしまい、今は大きく分けて二つの枝が残るのみです。二つの枝は一方が幹の右方へ、もう一方が幹の左方へと伸びています。

写真は右側。枝はけっこう太く、曲がりくねりつつも花をつけています。幹の構造のせいで大分無理な伸び方をしているので支えの棒が必要になっています。







339
























こちらは左方。こちらは斜め上に伸びています。立派に枝を伸ばしていますが、こちらもこのままだと確実に枝が折れるので吊っています。




296

















木の幹です。桜とは思えないほどの太さがあります。木というのはその幹の太さで樹齢がだいたいわかるので、この幹こそが神代桜の稀に見る長寿を証拠づけているのです。とても荒々しい幹の表面ですが、おそらく表面のほとんどはすでに壊死しているものと思われます。この内側にまだ活動している部分があるはずです。だいぶ空洞になっているところもありますが、それでも根幹はしっかりしていると思います。



313























木の幹を裏側から。ここから見ると、壊死していない部分を見られるのでその様子がよくわかります。真ん中には空洞ができているものの、右方、左方の幹のちからこぶのような盛り上がりには大変精力が感じられます。おそらくこのちからこぶの部分が先の右方、左方の枝に活力を送る源となっているはず。




315






































330




























これが2千年生きた桜の花です。まだ全く散っておらず、これから残りのつぼみも開花して満開になるところです。花弁はソメイヨシノと同じ色で葉も出ていませんが、花弁は小さく、うちすぼみであります。この花びら、見れば見るほど若々しく、瑞々しく感じられます。私は先夏、鎌倉本覚寺の樹齢数百年という百日紅の老木の花を見ましたが、その色合いは実に老練な風情を漂わせていました。この神代桜においては逆に2千年経っても若々しい花を咲かせるのです。



340























横から見た神代桜の木。幹の中央部は元気がなくなり、その勢力がだんだん右方と左方に移行していった歴史が木を見てわかります。しかしそれでも幹のちからこぶのごとき盛り上がりを見ているとまだまだ生きていられそうに思われます。ただこの神代桜にとっては人の手によってなんとか持ちこたえている枝がまさに生命線となるだけに、枝を台風や大雪によって折らせたりしないように注視しなければなりません。また老齢の桜は寒風や異常気象にも弱く、それが原因で死んでしまうことも十分考えられます。

桜とは人と自然を繋ぎとめてくれる美しい鎹(かすがい)であります。この最高齢の神代桜はその桜の象徴、始祖ですので、幾年、百年も生きながらえてほしく思います。800年前この桜が一度死にかけたときに、神代桜を訪れた日蓮上人が桜をよみがえらせた、という逸話があります。今もまた弱りかけている神代桜ですが、800年前の古事のように再び元気を盛り返してくれるだろうと信じております。今日はこの2千年の桜の神々しい華、そして躍動し続ける命を感じることができて幸せでありました。

神代桜はあと一週間は花が持つことでしょう。皆さまもこの二千年の息吹を是非実際に感じていただければと思います。







308
















おまけ。神代桜のある実相寺の本堂です。日蓮宗のお寺になります。






310
















実相寺の山門と水仙畑。これはヨーロッパのラッパ水仙です。祖母が昔湖水地方で買ってきたワーズワースの詩が入ったお皿にこのラッパ水仙の絵が描かれていたのを思い出します(一昨年私が湖水地方に行ったとき、まだそのラッパ水仙のお皿は売ってました、びっくり)。








311
















境内の三春滝桜の子ども。紅枝垂れなのでだいぶ咲くのが遅く、こちらはつぼみのまま。本家のほうもだいぶ開花時期が下ります。三春滝桜、とにかく見に行きたいです。