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金沢ほど良き町はほかにおいて無し。

一昨年11月に金沢を訪れ今までで一番良い旅をすることができたのは良い思い出。今でも自分の中で訪れてよかった町は一番が金沢、二番が奈良、三番が会津であります。金沢の良さ、その一番の要因は「人」だと思います。金沢の人たちは多くが加賀藩時代の名残から茶道と宝生能に親しんでおり、また非常に観光客をもてなす心の温かさを感じました。戦争を逃れた市街もまた現代と伝統がよく調和した不思議な風情を持っていてとても好きです。

金沢の人たちはよく和菓子を食べる、これも一つ金沢を知る上では重要です。この前再放送されていたNHK番組「美の壺」では金沢の和菓子を特集しており金沢の人々と和菓子の親しさが紹介されていました。和菓子の町、と言えば松江や京都が挙げられますが、やはり和菓子の消費という点では金沢の方が上、消費量は日本一だとか。そんな地元の人たちに支えられた金沢の和菓子について今日は紹介します。

まずは「美の壺」でも紹介されていた上の和菓子、金花糖です。南蛮菓子の有平糖に起源をもつとされ、今ではその華やかさから節句などに用いられます。可愛らしい見た目であり、中が空洞になった福徳という煎餅があって、それを割ると中に金花糖が入っているというものもあって子どもに大変人気です。番組ではその製法が紹介されていましたが、わざわざ空洞にするために型に入れたり、色を丹念に一つ一つ塗ったりと手作りの大変さが伝わりました。



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見た目の美しい五色生菓子。その成立には加賀前田家と関係が深く、徳川から加賀藩三代目で茶道を愛好した利常公に珠姫が輿入れされるときにその祝い菓子として考案されたそうです。五色はそれぞれ左から「海・日・里・山・月」を表しています。現在もおめでたい時にこの五色生菓子を贈るという習慣があります。



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金沢一、いや日本一の格式を持つ和菓子というとこれ、小堀遠州と前田利常の合作である「長生殿」です。唐の玄宗と楊貴妃のお話に由来する名前が付けられており、篆書体という変わった書体で「長生殿」の字があしらわれています。篆書体は当時はその無骨な字体が武家に好まれて格式高い書体とされておりました。

二人の考案者の内、小堀遠州はいうまでもなく当時の最高の茶人でありました。彼は作庭、各地の窯の指導、新たな好みの創造などで功績を残していますが、和菓子でもきちんと素晴らしいものを残しています。彼は書においては隷書体を好んでおり、箱書において彼の和風化した隷書を見ることができます。

また前田利常は現在国宝に指定されている野々村仁清の雉香炉を発注した人であり、金沢が文化都市として栄える礎を築きました。小堀遠州は利常と親交が深く、彼の様々な助言を参考にしつつ利常は金沢においける文化政策を実行していきました。この長生殿はまさにそんな二人の親交の中から生まれた逸品なのです。そして長生殿を現在まで作り続ける加賀藩菓子司のが森八です。美の壺では森八が300年を超える歴史の中で作られてきた膨大な数の木型が紹介されていました。



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彩霞堂のかわいらしい「福梅」。新春に咲く紅白の梅をかたどっています。梅といえば前田家の家紋は梅紋。前田家は戦国大名にあって珍しく源氏の子孫を称したりせず、菅原道真の子孫であるとしていました。その関係で天満宮の神紋でもある梅紋が家紋になっています。金沢城の鉛瓦には今でも梅紋を見ることができます。福梅も金沢の歴史に即した素敵な和菓子で地元の人に愛されています。




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美の壺にも出てきた吉はし菓子所。実は一昨年金沢に行った際にここの前を通っており、写真も撮ってました。いかにも金沢らしい風情で作り置きはやってないだろうなぁ、と思いながら去りました。番組でもやはり茶人の発注に応じて和菓子を作るというお仕事をこなす場面を映していました。お茶人として登場した大島宗翠さん、裏千家の隠居した先代と風貌が似ていて、いかにもお茶人らしい気品を備えた方でうらやましくなりました。金沢は裏千家の実質初代ともいえる四代目の宗室が金沢藩に仕官した関係もあって多くが裏千家であります。





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最後に私の金沢のおすすめの和菓子は兼六園下にある「中島」のおぼろ月と加賀奴。このお店は全国展開こそしていませんが、金沢の中堅規模の老舗では大変評判が高いことで知られています。いずれも金沢らしい上品な優しい味ですので金沢を訪れるさいにはぜひお買い求めを。


ということで奥の深い金沢の和菓子、歴史と人が織りなす素晴らしい世界であります。NHK美の壺の放送のまとめもありますのでこちらもご覧ください。http://www.nhk.or.jp/tsubo/program/file264.html


あとこちらは金沢旅行記です。

声松庵・野村家・中村記念美術館編
→ http://kizuna-maboroshi.doorblog.jp/archives/2013-11-25.html
兼六園・成巽閣編
→ http://kizuna-maboroshi.doorblog.jp/archives/2013-11-27.html
西田家・金沢城・県立美術館編
→ http://kizuna-maboroshi.doorblog.jp/archives/34414836.html
俵屋・東山ひがし・主計町茶屋街
→ http://kizuna-maboroshi.doorblog.jp/archives/34415664.html
大樋長左衛門窯元、寺島蔵人邸編
→ http://kizuna-maboroshi.doorblog.jp/archives/2013-12-02.html
天徳院・諸江屋本店・にし茶屋街編
→ http://kizuna-maboroshi.doorblog.jp/archives/2013-12-03.html