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昨日は小雨の降る中上野の東京国立博物館に行ってきました。お目当ては私が「古今東西の諸仏で最も美しい」と思っている会津勝常寺の薬師如来様にお会いするためでした。


東北にある仏像の中でも最も優れていたものの一つとして国宝になっているこの薬師如来。東北に仏教が伝来した平安前期に作られました。東北の仏像は木の質感がそのまま出たような彫り目の粗さが特徴ですが、この薬師如来は衣の表現などが都の仏像的で洗練されています。ただ御顔は肉厚でいかにも寒さの厳しい会津らしい地域色が出ています。肩のどっしりした感じや微妙に丸まった背中など、全体としてまるで破綻がなく、美しいの一言であります。

仏像の花形は形式の固定された如来よりも観音様に行きがちですし、確かにこちらのほうが慈悲深く美しさがあります。しかし私はこの会津という風土が生み出した、そしてかつてのみちのくの仏教文化の隆盛の名残であるこの仏像のほうに惹かれてしまいます。

勝常寺の薬師如来以外でも今回出ている如来像は薬師如来がほとんどです。これは疫病や飢饉、震災の多かった東北において薬師如来に祈ることでそうした苦しみを少しでも無くしたいという願いの表れでしょう。勝常寺の薬師様と比べると完成度は落ちますが、どれも都の仏像にはない個性豊かなものが多く単純にお手を合わせたくなります。

勝常寺と同じく都の文化が入ってきた山形・寒河江の慈恩寺には多くの素晴らしい仏像が伝わっており、今回は十二神将の内数点が展示されていました。鎌倉時代の慶派仏師の流れを汲んだ細かで写実的な彫刻、そして見るものに驚きを与える見栄の切り方など、同時期の都の仏像と変わらぬ完成度を誇っています。


今回は平成館が工事中だったので本館の一階での展示です。値段はいつもの特別展よりお安めで大人1000円になります。ぜひこの素晴らしい諸仏を拝みに訪れてみてください。



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こちらは平常展。いつもたくさんの展示があるので、今回は主題を決めて気になったものを取り上げます。お題は「斬新」です。

今回は驚いたことにかの本阿弥光悦の国宝「船橋蒔絵硯箱」が出ていたことです。書跡、作陶、蒔絵など分野を越境して創作を続けた天才・本阿弥光悦の頂点をなす作品がこれ。何度かお目にかかりましたが、平常展で見られたのは初めて。



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素晴らしきこの形状。硯箱、という「用」の側面の強いもので「美」を追求する、というのは光悦らしい挑戦だと思います。硯箱はけっこう蒔絵では見た目の美しいものが多く作られていますが、それにしてもこのこんもりと盛り上がった形状の硯箱というのは唯一無二です。

そしてさらに斬新なのは、彼の得意な書をその装飾に加えたことです。和様の書は特に江戸時代になると衣服や屏風、絵画など分野を越境していきます。光悦は蒔絵を巻物に見立てて言葉をそこに散りばめています。





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「東路の」(中段)



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「さのの」(中段)




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「舟橋」(背景が舟橋の絵)


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「かけてのみ」(中段)




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「思」(上段)



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「わたる」(上段)



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「を知る」(上段)





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「人そ」(上段)





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「なき」(下段)


『後選和歌集』より源等の「東路のさのの船橋かけてのみ思わたるを知る人そなき」という和歌を取り上げています。「中段」→「上段」→「下段」の順に和歌が続いています。最後の下段が「なき」と唐突に終わっているのがなんだか切ないですね。「船橋」だけは言葉としてではなく背景の四艘の船と波で表されていて洒脱さが出ています。






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信楽水指の最高傑作「柴の庵」。千利休所持でもありました。手前の大きく入ったヒビを愛でる茶人の美意識が「斬新」。



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様々な顔を見せる水指の表面。鬼のごとき赤い肌や伊賀焼と似た緑釉など、この景色の面白さは信楽でも随一です。



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桃山時代の気概、狩野永徳の国宝「檜図」。もともと八曲の屏風でしたがこのたびの修繕で四曲になりました。よく見ると八曲だったときの跡の縦線を四つあります。檜を真ん中に堂々と描き上げる表現は全く持って斬新。




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檜の苔です。



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ちょっと浮き上がっている葉っぱ。










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狩野派らしい山水画らしい筆遣い。






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枝先も力強く。






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永徳の描いた聚光院障壁画の表現とけっこう似ている枝の表現。




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狩野派っぽい岩の描き方。




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これは何焼かな。








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形がちょっと変。




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耳があるなぁ。こっちは赤い。


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伊賀焼水指です。この形はほかの焼き物には無い斬新さ。






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こちらも斬新な具足。西洋の甲冑を真似ています。確か漫画『へうげもの』では丹羽長秀が着用してました。実際には徳川四天王のひとり、榊原康政所用でした。



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用と美を折衷させた戦場の数寄。私は早くトーハク所蔵の小堀遠州の具足が見てみたいです。




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江戸中期の硯箱。先ほどの光悦の硯箱と比べると形はふつうですが、この縦縞横縞の交差する模様が近代の着物みたいで格好いいです。お花はたぶん山茶花です。



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ここからは小袖を。現代の着物の源流がこの小袖。今よりも刺繍が豪華で色使いにも今の感性とは違う斬新さを感じます。

まずは松竹梅紋です。柿色との相性も抜群。



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御所車・梅・鶴が描かれた萌黄色の小袖。滝の刺繍に使われている色合いが印象的です。






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最後は象牙色の松竹梅。竹が背中を走るように堂々と立っているのが斬新。一部には京鹿の子絞りのような文様も見られます。三つの中では一番これが好きです。最近私は和服の文様に凝っています。



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トーハクは建物も斬新。当時欧米ではやっていた歴史主義建築の影響を受けながらも屋根瓦や切妻造りなど和様との折衷が見られる稀有な建築です。



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トーハクを出た後は遅めの昼食。私の大好きな江戸前蕎麦、翁庵に行きました。






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久々の本格的な江戸前蕎麦。細麺でちょっと白っぽく、つゆは濃い目です。翁庵のは薮蕎麦とは異なりかなり虎の門砂場と似ています。信州蕎麦の味にしばらく浸っていたので久々にいただいて、これが自分の好みなんだな、と再認識。




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ちょっと湯島方面へ。行ってみたい酒場の下見。「奥様公認酒場」という謎のふれこみのある岩手屋です。酒は樽から出してくれるそうで格別の味だとか。





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梅の名所・湯島天神。まだ境内は3分咲き程度。早いものは満開近くまで行っていました。








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白や赤の梅。有名私立の合格発表のころにはちょうど満開になるでしょう。


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境内のちょっと古そうな絵馬殿と手水舎。





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御利益ありそうな古い牛さん。目いっぱい撫でました。





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湯島天神近くの看板建築のカフェ。二階の装飾が御洒落。




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こんなところにもお稲荷さん。



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埼玉・松山の箭弓稲荷からの勧請のお稲荷さんでした。






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最後は東京を代表する文化財の銭湯・燕湯。午前も開いているという現在では稀有なお湯です。


相変わらず新発見の多い上野界隈でした。