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数寄と茶花の話。

お茶会などでは普段野の花を生けて稽古する諸先生方も奮発して珍しい、貴ばれる茶花を生けるものであります。普段なら冬は椿で夏ムクゲで事が足りるところを、オオヤマレンゲをいくつも買い込んで、あのイチゴ色のめしべが見えるくらいに咲く前にまた新しいものを生けなおすといった感じです。

利休さんが今生きていたら、いや、千宗屋宗匠であったら、こういった野の花を生けない態度を待たれよ、と一喝するものだと私は信じています。容易に手に入らない花をハレの機会に得て生けるのはもてなしの一姿勢でありますが、一方では心萎えさせる行いでもあります。家の庭や近所に咲いている地味目な花をわき役として茶席にひっそり飾るのが茶花だとすると、高級な花を生けてしまうのは茶の精神に反する行いのように思われるのです。

その点では此度の茶会に出てきたクマガイソウにはちょっと複雑な気分でした。このクマガイソウ、ウチの先生のお弟子さんが育てたものです。那須塩原の山中に住む人から株を分けてもらい、千葉の自宅で繁殖させることに成功したそうです。今回はちょうど茶会の日に一輪咲いたので持ってきたとのこと。

クマガイソウは希少種の多いラン科でも特に絶滅が心配されているもの。源平合戦に参加し法然の弟子になった熊谷直実に由来しており、ちょっと臓物的な形状の花を咲かせます。近隣種にはアツモリソウがあり、無論花の名前の由来は熊谷直実が討ち取った平敦盛です。クマガイソウは平地で育てるのが難しく、乱獲で自生地はほとんど限られています。にも関わらずアツモリソウとともに茶花としても知られております。さすがにそん所そこらの花やさんじゃ売られていないので、茶会で生けようとするとオオヤマレンゲよりはるかに難しいものがあります。

そのような希少種でありますから、なおさら私は初めて見られたことを喜びつつも、眉間にしわを寄せざるをえませんでした。もはや現在のクマガイソウの状況を鑑みても、この花は茶花に過ぎたる茶花だろうと、私は思うのです。私としては山吹やシャガを生けたいな、という気分で茶花について考えをめぐらした次第です。