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煌びやかな黒の着物に見とれるトーハクの着物尽くし。

上野の東京国立博物館 久々に行ってきました。今回は特別展は見ず平常展示のみでした。

なにやら着物が今回はたくさん出ているとのことだったのでそそられてしまいました。トーハクの茶道具はだいたい見尽くしてしまったのでこちらに期待。




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帷子 黒浅地御簾藤模様

見惚れてしまう美しさの着物にさっそく出会いました。元々久留米藩の藩士の家に伝わっていたものだそうです。

帷子というのは夏に着る麻の着物のことだそうです。裏地がないので透けて見えています。御簾にからまるように藤が咲く様は何か源氏物語を彷彿とさせるようです。当時の人たちは平安時代にあこがれていたんでしょうね。






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単衣 濃萌黄絹縮地草花模様

こちらも裏地のない夏の着物。群青色の打って変わった地味目な模様です。

単衣というのは帷子と似ていますが絹仕立てなのが異なっています。




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よくよく見てみると。きめ細かな草花の刺繍に見入ってしまいます。絹地の美しさもよく分りますね。







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振袖 白縮緬地梅樹衝立鷹模様

ここからは近代の呉服商の野口彦兵衛が収集した着物を。商人でありながら着物を熱心に研究した野口は徳川の世において作られた着物を多く集めておりました。その時々の最も素晴らしい模様や作りを知ることでそれを真似てもう一度作り出そうと彼は考えたのであります。確かにどの着物も素晴らしい技術や手の込みようで今じゃ絶対に作れないようなものばかり。模様だけでも今の世によみがえらせてみたいものだと思います。

まずは加賀友禅から。さすがにどの着物も大変な手の込みようです。

上の振袖 なんとも言い難いような美しさであります。やはりいい味を出しているのが紫の染めこんだ部分。どうやって浸したのだろうというくらい絶妙であります。







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よくよく見てみましょう。

極彩色の鷹に衝立という取り合わせもまた洒落ています。衝立には刺繍で梅枝が。素晴らしいの一言です。








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小袖 茶綸子地四季耕作模様

独特の光沢のあるこれまた煌びやかな小袖です。

光沢は綸子によるものであります。綸子とは絹織物で地紋が浮き出たような風になっているものをそう呼びます。





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鄙びた風情の耕作の模様。こんなお洒落な着物に田舎の風景の絵をあしらうってちょっと不思議な気がします。

地紋のほうも見どころがあります。貝や流水など実にこまやかです。





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小袖 淡黄縮緬地縞島取梅枝模様

縞模様が大変お洒落なこちらの小袖。でも縞模様だけあっては逆に野暮ったいのであり梅枝の刺繍や扇面の模様があってこそ引き立つものです。






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最も注目すべきこの梅枝の刺繍。なんとも優しい色合いです。よく見ると花びらも色が微妙に違っています。金色の花びらもありますね。





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小袖 浅黄縮緬地唐山水模様

浅黄色というよりはだいぶ青の濃い小袖です。

浅黄色は緑のような水色のようななんとも言い表せない綺麗な色合いです。かなり濃い色なのでこれに合うとなるとやはり模様には濃いめの色を用いねばなりません。




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唐山水の模様には赤や緑など浅黄の濃さに負けない色を使っています。それにしても唐山水とは言いますが島ばかりでまるで松島図みたいになってますね。光琳や宗達の松島図をちょっと思い出します。






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小袖 白綸子地竹垣萩文字模様

さわやかな白が映える小袖。やはり綸子地なので華やかに見えます。





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おしゃれな綸子地に目を奪われそうですが一見地味な萩模様も素敵です。やはり萩というと秋花の伊達者でありますので着物にもよく合うんですね。






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打掛 紅綸子地水仙梅葵菊七宝模様

華やかの極地のような紅の打掛がご登場です。

打掛は上流階級の人々のための羽織り着のことです。裾が厚くなっているのが他の着物と違うところです。ふきと呼ばれる綿をつめています。

茶道漫画『へうげもの』でも四巻で加藤清正がおね様に辻が花の打掛を贈ってその始終を物欲しそうに見ていた織部がこの打掛をもらってしまうなんてことがありました。打掛というのは上流の人たちより下では全く縁のない華の有りすぎる着物でした。







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そんな打掛だけあって模様もとりわけ煌びやかであります。

梅や葵に菊といった花々が惜しげもなくあしらわれています。やはり地の紅色が効いていますね。吉祥模様である七宝もまた洒落ています。






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振袖 紅縮緬地牡丹立木文字模様

こちらもなかなかお綺麗な振袖。

橙色の地に対して模様の牡丹は白を基調としていて色の取り合わせとしてもなかなかのものです。







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背の部分には金文字があります。それぞれ「萬」「歳」「楽」とあしらわれています。

それにしても模様の牡丹がこんなにたくさん咲いているものかとふと思ってしまいます。まあこれは模様ですし立木になる様もなんとも華やかであります。




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茶屋染

ここからは茶屋染と呼ばれる着物を。

茶屋染めは麻地に主に藍を染めたものであり特に武家女性が夏の帷子として用いたそうです。帷子というのは麻の単衣の着物であります。湯帷子と呼ばれたものは今の浴衣となっています。

上を見ると地の白と模様の藍がよく和した実に涼しげな感じが分かるかと思います。夏の着物ですが浴衣と比べると相当模様などの作りがきめ細やかです。「糊置き」と呼ばれる独特な技術が用いられており白地の部分に糊をぬることで染める時にはそこに色がつかないようになるそうです。








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茶屋染めは藍色が主ですが黄色も用います。また刺繍も交えることで凝り具合も増しています。藍色の部分には流水 そして刺繍には葵の葉があしらわれています。





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帷子 白浅地風景模様

これぞ茶屋染めといわんばかりの帷子が登場です。

この美しい藍色こそ茶屋染めの真骨頂であります。卵色の地の部分が糊置きをした部分。いかに精巧につくられているかが分かるでしょう。

模様の風景のほうは水のある避暑地の様を描いておりとっても涼しげです。






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実はよく見ると藍染めだけではなく刺繍も一部ほどこされています。

楓や菖蒲 松にひかえめにほどこされた刺繍は藍色を単調にしないためのいい味を出しています。








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紅型衣装 浅黄地波松梅紅葉模様

こちらは琉球の衣装です。今までの着物とはやはり色使いの違いが感じられます。二百年前に作られたものです。





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紋様には梅や楓があしらわれており和風と琉球様を折衷した紋様になっています。薩摩藩を通じてそうした和風の紋様が取り入れられたのでしょう。



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禾目天目 南宋時代

お着物はここまで。次は茶道具といきましょう。常に平常展では二階の一角に茶道具の取り合わせの一式を展示した場所があります。まるまる一つでいつも茶道具を展示してくれるのですからいかに茶道具というのが日本の美に大きな地位を持っているかが分かるでしょう。

まずは天目茶碗ですね。禾目天目です。天目茶碗は模様によって名称が色々とあります。



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禾目というのは稲の穂先のことを指します。穂先のように釉薬の模様がなっているのがその名の由来です。

この茶碗は伝来が分かりませんが南宋時代の伝来品なのでさぞもてはやされたことでしょう。







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竹茶杓 竹野紹鴎作 松江松平家伝来

珍しい紹鴎茶杓です。千利休の師であり侘茶を一気に推し進めたのがこの竹野紹鴎であります。茶杓には変わった場所に節目があります。これは「行」の茶杓といいます。

茶杓は節の位置によって真 行 草 という格付けがされています。真は節無し 行は下の方に節が 草は真ん中に節があります。行の茶杓は数が少なくめったに見られません。みんな草の茶杓か真の茶杓しか作らないからです。こちらの茶杓は行の茶杓の最優品といってよいでしょう。









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唐物肩衝。堂々たる風格です。「松山」(しょうざん)という銘です。大喜多藩の松平家に伝来しました。

ちょっと横に広すぎますが肩衝らしさがあって一国の大名が持つべき格があります。





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偈頌 月江正印筆

掛け軸は墨跡 しかもちょっと珍しいものです。偈頌と呼ばれるもので五行詩の形をとっています。月江正印は元代の大変優れた禅僧であり日本の留学僧も多く彼の門下に入っていたそうです。



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月江正印の自体は大変真面目さを感じさせるものであり「破れ虚堂」の墨跡で知られる虚堂智愚の字とよく似ています。奇をてらうことのまったくない文字は彼の実直な人柄を著しているのだろうと思います。







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 高取 片身替釉洲浜形向付

福岡の焼き物 高取焼です。濃い色合いの釉薬が特徴です。向付というのは懐石に用いる刺身や酢の物の器のこと。








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洲浜形の湾曲が焼き物にはよく合います。織部焼でも洲浜の向付がありました。

茶色の釉薬は懐石には合うんでしょうかね。実際に盛り付けてみないと分からなさそうです。私としては中国の古染付みたいな地味めな色合いのほうが懐石にはあっていると思います。







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最後に他の私が注目した展示品を。

徳川四天王の一 榊原康政の具足であります。当世具足の優品であり重要文化財に指定されています。





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なんといってもこのころの具足はとにかく凝っています。奇をてらいすぎたものもありますが戦場ではそれくらいがちょうどいいのです。

上の図では手の甲の部分に法輪があしらわれています。腕の模様もなにやら西洋風です。






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当世具足で一番注目してしまうのが兜です。

榊原の具足には三鈷剣と呼ばれる密教の法具があしらわれております。戦場に法具を持ち込むというのはなんだか仏の教えとは逆な気が。しかし密教の法具というのは悪を滅ぼし善を興すものでありますので榊原にはそういった気概があったのでしょう。大変意気込みを感じる具足です。






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これまた洒落た模様が。立波です。






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こちらは花菱が金具にさりげなくあしらわれています。戦場であってもやはり野暮な武辺者であるよりは具足にカッコよさを見せたいのです。





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榊原の画像も同じく展示されています。図像で彼がまとっているのがまさしく先の具足です。顔立ちを見るといかにも三河武士の屈強そうな感じがします。でもちゃんとお洒落な具足は細部まで書き込まれています。





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こちらは『へうげもの』一巻で確か柴田勝家が着用していた具足だったと思います。金剛力士の屈強な体躯をあしらっているのですがいかんせん小柄で強そうには見えないのです。






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こちらは杉戸絵です。京都で活躍した丸山応挙によるものであります。彼は写生により会得した写実的な絵を描いたことで知られています。ただ犬っころになると別でちょっと間抜けた丸っこい犬を必ず描きます。私はこの犬がけっこう好きです。




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ほのぼの応挙。朝顔の優しげな色合いがまたいいですね。






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最後はまた犬です。酒井抱一が絵馬の依頼を受けて描いたものです。抱一は基本花鳥風月を描く洒落者絵師でありますが犬を描くというのは珍しいです。右の犬に注目したいのですがなんとなく仕草が彼が若いころ描いていた浮世絵の女性のそれと似てなくもないなぁと思いました。犬と人を比較するのはためらわれますがほっそりした体躯や見返る様には抱一らしさがあるのではと思います。


以上が久々のトーハク詣りでした。今回でちょっと着物の見たても上がった気がしますし俄然興味が湧いてきました。