美術館というものは一年の中で秋に最も良い展覧会を開くことが多いです。

秋というのは人々が暑さからやっとのがれられて「何かをしたい」と思いたくなるような時だと思います。春は逆にまどろんでしまってお昼寝したくなるのではないでしょうか。なので人々の関心が最も美術館に行きやすいはずですし 記録を見てもたぶん秋が一番美術館の人の入りは多いのではと思います。

今年も東京の美術館では見てみたいような展覧会がたくさんあります。当所が扱えるのは日本美術だけにとどまりますが それでもけっこうな数です。

私としても予習のつもりでこの秋の展覧会についてご紹介いたします。


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1、根津美術館 「根津青山の至宝」展

根津美術館の収蔵品は実に莫大です。実業家で茶人の根津嘉一郎(青山と号す)が収集した品々がこの美術館の核となっているのですが 今や寄贈品や後から購入したものなどが積もりに積もって根津青山がどういう数寄眼でもって蒐集を行っていたかは分かりにくくなってしまっています。

その点では今回 根津青山に焦点を当てて彼が必死に集め守り抜いた収蔵品を一挙に見られる機会ができましたことは大変嬉しいことであります。しかもそのその品々の豪華さは垂涎モノ。彼の収集した品々の中にはのちに他の数寄者の手に渡ったものもあって 今回はそれらが「里帰り」という形で集められているみたいです。

特に必見は本阿弥光悦作の赤楽茶碗の加賀光悦です。光悦茶碗の中でもその燃え立つような景色から代表作との聞こえ高いものです。展示期間は9月25日から11月3日までなのでお気を付けを。



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2、三井記念美術館 「三井家伝世の至宝」展

三井記念美術館は美術館としては大変新しいほうです。この度開館から10周年となります。それを記念して今回は大規模な名品展が行われます。

三井家は表千家と交流が有り 表千家所蔵のお道具で三井家に流れたものだったり お茶好きな当主が収集したものがあるのでいいものばかりです。今回の展示では茶道具だと

志野茶碗 「卯花墻」
黒楽茶碗 「俊寛」 長次郎造
唐物茶入 北野肩衝

を始め様々なものが見られます。他にも絵画だと丸山応挙の国宝「雪松図」や重要文化財「東福門院入内図屏風」も出るそうです。

詳しい展示品は興味があれば下からどうぞ。

http://www.mitsui-museum.jp/exhibition/index2.html




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3、畠山記念館 「桃山茶陶と『織部好み』」展

実業家にて茶人の畠山即翁の数寄を今に伝える茶道美術館です。今年は古田織部の四百回忌ということで それにちなみ桃山茶陶と織部好みを扱った展覧会が催されます。

桃山茶陶 特に織部の活躍した慶長年間においては「ゆがみ」や「ひずみ」「ひび」などをわざと茶道具に入れることが流行しました。そうした趣向は織部好みとも言われて古田織部の好みを映したものと言われています。しかし実際織部がどこまで桃山茶陶に影響を及ぼしたのかは不明です。茶道漫画『へうげもの』においては「かぶき」の風潮と茶道具における「歪み」の好みは同時進行のもので時代精神そのものとして描かれていて 一定の説得力があります。

今回のお道具の中には伊賀花入「からたち」や割高台茶碗といった即翁のお道具の核心に迫れる品々が多く出ますので 初めて行かれる方は必見です。





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4、サントリー美術館 「国宝 用変天目茶碗と日本の美」展

サントリー美術館というのはあまり美術館らしくない美術館です。六本木のビルの一角という立地や装飾性の一切ない館内には けっこうがっかりする人は多いと思います。ただ企画自体は毎回素晴らしいものであり 私はあまり六本木が好きではないのに何度もここを訪れています。

今回は有り難いことに大阪にある藤田美術館の収蔵品が東京にやってきています。藤田美術館の持っている茶道具の質は私が思うに日本一でありましょう。その頂点を極めるのが世界に四つしかない 曜変天目茶碗であります。この曜変天目茶碗は静嘉堂文庫所蔵のものと比べると派手さはないものの 控えめな色合いの妙が小宇宙のような景色を生み出しております。これも茶人ならば必見の展覧会と言えます。



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5、同 「久隅守景」展

そのサントリー美術館で曜変天目茶碗展の次にあるのが 德川の世の初期に活躍した謎多き絵師 久隅守景の展覧会です。

私はこの久隅の絵がけっこう好きなのですが それは狩野派でもない唐様でもやまと絵でもない 彼なりのほのぼのとした絵の世界を作り上げたすばらしさ故であります。この時代の三つの絵の派閥 それは牧谿や雪舟の画風を継ぐ唐様の一派 昔から受け継がれてきた風景画を伝え古き良き時代を描いた住吉 土佐などのやまと絵の一派 そして唐様の豪快さととやまと絵の繊細さを折衷した狩野派でありました。

久隅ははじめ狩野派にありましたが 破門されて金沢に招聘されます。彼を呼んだのは現在の金沢の礎を築いた前田利常でした。彼の画風が確立されたのはいつなのかはわかりませんが 私は久隅のことを勝手に金沢に行って成功した絵師だと思っています。

今回は彼の代表作で国宝の「納涼図屏風」が前期に出ますが 私としては後期に出る「賀茂競馬 宇治茶摘図屏風」など民衆風俗を余すことなく描いた大作を見て頂きたいです。





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6、出光美術館 「桃山の美術」展

畠山記念館と同じく桃山茶陶を扱った展覧会です。

私はすでに見てきましたが 感想としてはちょっと雑多な感じがしました。なぜかというとこの展示会における「桃山美術」が何を指すのかいまいち絞り切れていないからなのです。確かに歪みや躍動や回帰といった言葉を提示して展示をまとめようとしているのですが いかんせん広すぎてまとめ切れていない気がします。桃山という時代は思うに一言で言い表せるほど明瞭なものではないし まず茶陶と絵画はしっかり分けた方が統一性があると思いました。

でも私としては長谷川等伯の絵を二点も見られたので良かったです。この時代の美を色々とみてみたい方にはおすすめです。





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7、五島美術館 「秋の優品」展

粒ぞろいの茶道具が集まる五島美術館 今回も墨跡を中心に色々と出ます。伊賀水指「破れ袋」が登場しますので まだ見てない方は是非どうぞ。

最後の10日から18日までは国宝の「紫式部日記絵巻」が出ますので必見です。



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8、同 「一休」展

私が見たのはむしろこっちの一休展です。ふだん中々見られない一休ゆかりの大徳寺真珠庵や京田辺の報恩庵が所蔵している一休墨跡や画像がたくさん出展されます。報恩庵に行って一休廟にお手合わせするのもよいですが 奇人一休を偲ぶのにこれほどよい展覧会はないでしょう。




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9、山種美術館 「琳派と秋の彩り」展

江戸から現代にいたる日本画を収集している美術館です。

いわゆる琳派と言われる絵師たちは金銀箔を用いて無駄な装飾を一切排するという画風で知られています。今回の展覧会には酒井抱一の代表作の一である秋草鶉図をはじめ 彼が慕った尾形光琳や 抱一の弟子で最近注目されている鈴木其一などの絵が出展されます。今年こそは私も抱一の絵を見に山種に行こうかと思います。


ほかにも無数の展覧会がございますが今回はこの辺で。ぜひご参照頂ければ幸いです。