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鎌倉は梅である。

近年の北鎌倉はだいぶその風情を変えつつある。もう行くこともあるまいと思っていたが東京に適当な観梅ところが無いから久々に足を運んだ。やはり新しい建物が増えた。古い趣或る民家は次々と無くなる。北鎌倉の風情の牙城だった鎌倉街道沿いの藁ぶき屋根の家も今回来たら更地になっていた。もう鎌倉散歩はこれでおしまい。そう思った。

東慶寺は相変わらず綺麗。寺の人ではない地元の人みたいな中年たちがいそいそと畑に這入っては草を取る。管理はよくされている。その分何年も行くと新鮮さが無くなる。





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ここの梅もよほど古い。いつ植えたか分らぬが数十年は経っている。梅は上に伸びすぎるとだんだん末端のほうに花がつきにくくなる。遂にはただの狩野山雪の描くような木の幹だけが残る。だから此所の梅は相当な爺だ。梅には爺なら爺の風情が出るのだがなんだか駄目な気がする。幹が異様に堅苦しくていい花をつけそうにない。良い老年じゃないわけだ。





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鐘突き堂あたりの梅は綺麗。去年伸びた枝から上手く若がえった花が咲く。いい香りで酔ってしまいそう。梅はこんなに酔いそうになるから良い。蝋梅や水仙や沈丁花や 香り花は色々だけど梅ほど良いものはない。歩いているうちに気分よくほろ酔いになるのだから。







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今年は寒かったり暖かかったりのせいか梅も困惑しているみたい。咲き方はちょっと不揃い。もう終わっているものは終わっちゃっている。一応一番良いときに行ったのではないかと思うが 全くつぼみすらついていない梅もあった。今年は駄目に終わった梅の木も多かろう。



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白梅は無垢の梅。よく日光を受けて花弁を照らして男女を誘惑する。でもなんか老成している。ませているんじゃなくて幼くして人の心を心得ているような早熟というか。だから梅は白梅のほうが良い。



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薄紅の梅。うぶな感じがして可愛い。その色合いは若年の惑いに似ている。もう自分が失ってしまった色かもしれぬ。こういう頬をした通学の生徒を見られた時にはやはり初々しい花を思い出すかもしれない。


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紅梅は明るい色。表裏がない。白梅はやけに色々知っているような風情だけどこっちは常に安穏としていて良い。見た目に少し飽きは来やすいかもしれぬ。やはり紅より白が人気だ。





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さらに紅いと木瓜になる。瀟洒な花である。花弁の形が艶やかな唇のようだ。男を誘っているみたい。しかも棘がある。茶席に飾るなら梅にも引けを取るまい。木瓜はやはり真紅の此の色に限る。





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金縷梅である。造り物みたいだ。卵の色をしている。こういう練り菓子を誰か作ってほしいものだと思う。ちょうど之が綺麗だろうと思って東慶寺に来たかった。




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東慶寺を出る。鎌倉街道を歩く。最近茶室が一つ出来た。裕福者のやることである。独立した建物の立派な出来である。




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扇ガ谷の海蔵寺に至る。しだれ梅が綺麗だ。しだれ方がいまいちだが置かれた場所が良いのでどの方向からでも堂舎と重なって絵になる。この木もかなり背が高く老木であることがうかがえる。花の寺 海蔵寺でもこの時期と四月の山吹と海棠 五月の躑躅 九月の萩の時期は見に行くことをおすすめする。他の寺と違って全くせせこましくないからいつまででも居たくなる。




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梅は老木のせいか若枝の伸びがいまいちだ。しだれ梅は格好いいがやはりちゃんとしだれているに限る。そして濃い紅梅が良い。少しこの梅は年老いすぎている。




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こちらも老年の梅。つぼみは紅く花は白い不思議な物。枝振りは少し危なっかしいがちゃんと花芽がついているので大丈夫らしい。



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福寿草を見つけた。朗らかで良い。今年はだいぶ遅い気がする。温かかったり寒かったりで彼らもいつ地上を見てよいか迷っていたろう。




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本堂横のやぐらだ。裸になった山吹の茎が暗さをたたえた小川に沿って根を下ろしている。




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山吹の茎。とても元気がよさそうだ。




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八幡宮の源平池に出る。河津桜が咲いている。外に出ると段葛は非道い工事中。もう鎌倉はおしまい。そう思って鎌倉をあとにした。