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北陸にそろそろ梅雨入りの知らせが舞い込もうかとする頃合い、大分空模様もすぐれない日が増えてきた。6月ともなると山は雪解けが進み登ることのできる高山も多くなる。実に行ってみたい山は様々にあるのだがいかんせん雨に邪魔されて行き難い。今回はその合間を縫うようにして残雪未だ残る立山へと繰り出してみたのである。

立山という山はわりかし登りやすい、しかし大展望が簡単に得られるところとして知られている。というのも標高2500mまで乗合が運行しているからだ。乗鞍岳のように誰しも気軽に とまでは言わないがさほど労せずに登ることが出来てしまう。そういうお手軽さからしてもあまり頂点を極める手応えは他の名山と比べると少なかったりする。なのでというわけでもないが、敢えて残雪期の少々大変な時期に立山へと行ってみることにしたのだ。それに6月のこの時期は立山を住処にするライチョウに最も会え易いのだともいう。私は甲駒に行った時も常念岳に行った時も雷鳥を見逃しているのでどうしても見たかったのだ。

登山は室堂から立山三峰を縦走し真砂岳を経て周遊する形で再び室堂に戻る計7時間程度の行程だ。朝早くに家を出て室堂到着は10時過ぎ、それから室堂を出る最終便の乗合のぎりぎりまで立山を散策する計画である。






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当日の天候は晴れ後曇り。家を出る時に窓から白山が見えたのでまあまあ展望はあるかと思って期待する。室堂までは富山駅から二回も乗り換えをするのが面倒だ。しかも休日とあってまだ残雪期なのにも関わらず電鉄は大混雑であった。一時間鈍行に揺られているとだんだんと景色は田舎になり車窓からは立山の姿も近づいてくる。とはいえ此所から2000m以上も上るのかと思うとまだまだ遠い。



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車窓からは名峰薬師岳も見ることが出来た。立山の東にあるなだらかな形をした標高2926mの高山だ。富山から見るに格調高く秀麗な姿をしていると思う。この夏には登るつもりでいるが、日帰りは無理な上に乗合の本数があまりに少ないので面倒である。




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電鉄からケーブル さらには乗合に乗り換えてぐんぐんと高所へと進む。途中には豪雪が生んだ立山杉の巨木が林立し吃驚させられる。また滝もいくつか見ることが出来、有名なのが称名の滝という落差日本一の滝だ。滝は三段に分かれていて遠目からでもその見事さがうかがい知れる。山というと名瀑は多いけれどもたいていは秘境にあるので人目に付き難い。その点では称名の滝は車窓から見られるので有り難い。




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阿弥陀が原とその向こうに富山盆地が見えてきた。これだけ見えるから今日はまだ景色は良い。とはいえ上の方ではいつ崩れるかはわからない。





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先ほどの薬師岳が大分間近にとらえられるようになってきた。こう見ると名山だというのがよくわかる。





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今回上る立山三峰が姿を現した。残雪は多く残っているけれども例年に比すれば相当少ないほうだ。雲もかかっておらず良い山旅が期待できそうだ。



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立山の北の端に剱岳がその姿を見せた。鋭くとがったそのいでたちは一目で剱だと分かる。山頂の左に見えるギザギザした稜線は一般通行禁止の難道で逆側から登らなくてはならない。誰しもが憬れる山である。この夏は剱岳も上りたい山の第一候補の一つだ。




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名物 雪の大谷へと差し掛かれば室堂到着はもうじき。大谷の雪はもうすっかり溶けて数メートル程度にまで来ている。もともと20mもあったことを考えるといかに雪解けが進んでいるかわかる。



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10時過ぎ、室堂に着くと雄山が目の前にどっしりとした山容を見せつけてくる。客は山スキーもぼちぼちいて、また残雪の自然を見に来た観光客も多くいた。登山客はまばらであった。此所から雄山山頂までは約二時間。すでに2500mもあるので高山病にならないようゆっくり歩かねばならない。



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登山道は予想よりも多く雪が残っていて足元を難渋(なず)ませる。写真の上にスキーの跡があることからもわかる通り未だ結構山スキーの客は多い模様。



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雄山の下の鞍部である一の越まで上ってくると向かいの展望が最高だ。飛騨山脈の南部の山々をよく見わたすことが出来る。これぞ上った人しか味わえない景色。



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中央奥には誰が見てもの槍ヶ岳と穂高の山並みが。此所からだと意外に近く感じるのは気のせいではなく二三泊ほどすれば薬師岳麓の折立から槍ヶ岳まで至ることも出来るだろう。



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右端には笠の形の笠ヶ岳。どこから見ても笠の形をしている不思議な山だ。先月笠ヶ岳近くの焼岳に登った際にはその山頂部を確認できなかったけども今回ははっきりと見ることが出来る。



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そして振り返れば室堂平の豊富な残雪の景色が。やはり残雪の山は何とも言えぬ美しさがある。中央には池が見えるがこれはみくりが池という。此所には温泉があって今回入る予定だ。



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雄山へ至る最後のガレ場の登りが実にきつい。此所であまりに息切れして高山病を得てしまうのは想像に難くない。少々手の末端まで空気が行っていない感覚があったので休みを多くとりながら慎重に進んでいく。



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ミヤマキンバイ

ガレ場を好んで咲いていたミヤマキンバイ。小さいけれども目を引く。



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黄花石楠花

非常に背の低い高山帯に生息する石楠花。よほど高所に行かないとみられない花であり今回初めてお目にかかった。




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ツガザクラ

岩根に咲くツガザクラ。高山ではよく見ることが出来る花だ。ドウダンツツジに似た壺状の花を咲かせるのが特徴だ。



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12時過ぎ、急坂を登り切りいよいよ雄山神社の山頂社がお出ましだ。山頂部は3000mを越えており非常に展望が良い。





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此所が雄山山頂。お詣りを済ませてから一息つく。雄山神社は越中一の宮であり立山山麓の岩峅寺には御前立社がある。夏の時期には山頂にも神主がいるのだがまだ梅雨にも入っていない今は数名の登山客以外誰もいない。




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頂上からの展望はこんな感じ。さきほどより雲が増えてきてこれからは天候は下り坂の模様。





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雄山を下り大汝山、富士ノ折立へと続く縦走路へ。北側はすでに雲が出てきてしまい向こうに見えるはずの剱岳も隠れてしまった。





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二つ目の山頂、大汝山は3015mの最高所だ。雄山よりも若干高い。この辺まで来ると登山者は全くいなくなる。



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山頂からは眼下に黒部湖を望むことが出来た。電鉄で乗り合わせた大勢の観光客の目的地はこの黒部湖なのだろう。雄山の山頂直下には室堂から黒部湖へ抜ける乗合が通るための隧道が掘られている。



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縦走路にはところどころ残雪が残っているがそこまで手間取ることはない。気持ちの良い稜線歩きの楽しめる場所だ。



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三つめの山頂が富士ノ折立。とがった岩稜の急峻な岩場だ。



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ハクサンイチゲ

夏花でお馴染みのハクサンイチゲ。まだ雪解けから顔を出したばかりだがもう花が咲きだしている。




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富士ノ折立からは一気に下って真砂岳まで砂礫帯を進んでいく。この辺はかなり強い風が吹き付けて過酷な環境であることは想像に難くない。







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14時ごろ、真砂岳手前の分岐に至ったところで再び室堂平への下山を開始する。雷鳥のいそうなハイマツ帯を一気に下っていく。




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下って所から見る真砂岳。本当はこのもっと北の別山まで行って剱岳を拝みたかったがそれは今度の機会に。




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だんだんと三峰の姿が上の方へと移動していく。ここから見るに人を寄せ付けない厳しさとその逆の優しさや緩やかさが共存しているかのような印象を抱く。



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真砂岳から室堂に至る登山道は雪に埋もれてほぼ無いといってよい状況だった。しかも勾配がとんでもなく急で雪道で何度もこける羽目に。



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15時前に苦労をして室堂平まで下りてきても未だ人のいない雪原地帯だ。一応山小屋が遠くに見えるので安心はできる。ただ霧にまかれたりしたらかなり危ないかもしれない。




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立山の残雪と湧き水が作り出す川にかかる橋を渡る。此所を越えれば雷鳥平の野営場だ。



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川越しに見える立山はだいぶ雲がかかってきた。天候によっては結構危なくなる危険性もある。とはいえ雷鳥平からはもう一般の観光客もいる場所なので大丈夫だ。




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先ほどまで通ってきた雪原を振り返る。此所をまっすぐ進んで登れば剱岳の入り口である別山乗越へと至る。正直かなり大変そうだ。



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雷鳥荘を越えたあたりで雷鳥の雄を遠目で捉えた。ゲゴッゲゴッと蛙のような声がよく響き渡るので直に雷鳥だと分かる。付近の様子を見渡した後で再び飛び去ってしまった。






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今度は雪原の斜面に雄の雷鳥二羽が。まだ若鳥なのだろう、仕切りに取っ組み合いをしていた。




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さらに今度は遊歩道から雌の雷鳥が。周囲の色に紛れ込むような羽毛をしている。



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さらに雌を追って雄の雷鳥が現れた。




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随分間近にやってきた雷鳥。思ったよりも小柄である。早くもすっかり夏毛へと様変わりしている。足に色のついた輪がついているから観察の対象になっているみたいだ。




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人を全く気にする様子も無し。雄はとにかく雌を追うことしか考えていないみたいだ。




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しばらく雷鳥はその場にとどまっていたのでじっくり観察をすることが出来た。なかなか贅沢な体験だ。



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雌をひたすら追う雄。この二匹は夫婦なのかそれとも一方的に雄が思いを寄せているのかどっちなのだろう。




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雷鳥たちとしばし戯れた後はみくりが池へ。この時期はまだ雪に埋もれているであろう池はすでに大分その顔を出し始めていた。此所からは水面に立山が写し鏡のようになってとても美しい。



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こちらが秘湯を守る会にも入っているみくりが池温泉。日本一高所にある温泉として知られている。気づかなかったのだが立山は今も活発な火山であってその恵みがこの温泉なのである。




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温泉は少し濁り気のある熱めのもの。泉質は単純酸性泉というがかなり硫黄分は多いと思う。同じ酸性泉では草津温泉があるが、あちらほどはきつくなく実に肌触りが良い。自分としては大満足で立山に来るなら絶対訪れるべきだと思う。




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外に出ると「地獄」が元気よく噴煙を上げているのを見つけた。この活動はかなり活発であり周囲には立ち入り規制がかけられている。散策路でも十分にこの此所から来る硫黄臭を嗅ぐことが出来る。




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16時過ぎにようやく室堂平の由来となった室堂まで戻った。室堂は江戸時代の山小屋建築で大峯山寺の本堂を思わせる簡素さが特徴だ。



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室堂の湧水を頂いてから帰宅に。水は少し苦めで栄養分がとにかく豊富そう。名水100選にも選ばれるほどに美味しい。



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帰りの電鉄からは夕陽が奇麗。何か今回の旅を締めくくるかのような叙情的な景色であった。

立山登山、天気は良くもなく悪くも無しだったが雷鳥に会えて温泉に入れて大満足であった。強いて言えば今回は500mしか登らなかったので頂上を極める充足感が欠けていたのは物足りなかった気が。本来はかつての修験者も用いた旧道を使うべきなのだがそちらだと二泊三日もかかるのでさすがに出来なかった。今回は剱岳の姿を始めて見つけて是が非でも登りたくなったので今度来るときは剱登山が目的となるだろう。おしまい。

(今回から映写機をキャノンの一眼レフに変えた。なんだか重くて使い慣れないが性能は抜群だ。前のものが少々安価であっただけにこれからはさらに視覚に訴える写真を提供出来る…かもしれない。)