美しいままに人は死ねるか

そう思って覚(おぼゆ)は幼馴染の波呼(なみこ)を殺めた

ひかり苔があるから見ようと嘘を言って、彼女を山の杉並木の中まで来たところで

豚のもがく汚い音の後、波呼は波呼でなくなった

覚の手首に汁と切りそろえられた黒髪が落ちてきた

覚は遺体に唾して、掌に眼をやる

「聞こえるか、お前さんよ、波呼、記憶は君を永遠の憧れへと誘う

僕の君は、君の僕は若さの内に封じられ、誰にも侵されない」

彼の為の、河原における斬首が始まろうとしている 見物人が向う岸に集まる

波呼の情通わせた人と、父と踊りの師が白無垢の彼を糾弾する

「彼女は地上の観世音であり、最も清寧な魂の脈動だった

提婆達多の万死に値するお前よ、末期の光を言い表してみろ」

覚は舌と涎を出し、下腹部を激しく怒らせている

「有り難い、死は贅沢なものだよ 僕は波呼を殺し、貴方がたは僕を殺す

恍惚よ、早く私の内を通り抜けるが良い」

彼は死に、生首は晒し台の上で蠅によく好かれた

而して頭は覚の母が奪って行った

やがて竹林の中で喉に刀を突きさしたままの母の姿が発見された

何もかも、申し訳の為だった