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昨日とうって変わって真っ青な空となり、昨日の雨風で散った桜の花びらは水面に浮かび川には花筏ができていました。

写真は目黒川の花筏。


 
この世には不思議な茶碗があるものでして、私にとって最も不思議なのがこの青磁茶碗。

現在東京国立博物館蔵(写真もHPから拝領)で重要文化財に指定されている南宋時代のものです。

銘を馬蝗絆(ばこうはん)といい、足利義政が所持し、その時にはもうヒビが入っていたため、中国(明)へ代わりを求めてこれを送ったところ、これに代わるものはもはや作れないと、かすがいを付けて返されたという。そしてそのかすがいをイナゴ(馬蝗)に見立てたという。

その後も名声は高まり、名だたる数寄者の手を経て現在に至っています。

色合いの素晴らしさときたらこの上ないですが、私は初めて見たとき、なんでこんなツギハギものが珍重されるのだろうと思いましたが、そんなようでは茶の数寄根っこはいつまで経っても分からない。

欠けることのない月は嫌にて候う、と言った村田珠光。中国青磁の満月はやがて使われていくうちに秘話を伴いつつ欠けた月に落ち着いた、という訳です。

伊賀花入

伊賀焼の「破れ袋」や「からたち」(上、畠山記念館HPより)は半ば失敗作でしたが、数寄者が見出すことで名物道具へとのし上がった。馬蝗絆も同じです、常識なら駄物として破棄されるでしょう。それをさせなかった茶の湯の美意識とはなんなのでしょう。

そのような全く稀有な価値観が現代にまで伝わっているのは幸運なことです。私は馬蝗絆を見るたびにそんな気持ちに満たされるのです。