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(上から時計回りに、早蕨、菱、残雪)

東京・千代田区の神保町。ここに素晴らしいセンスと味の芸術を兼ね備えた生菓子を作る和菓子屋さんがあります。

駿河台下の交通量の多い交差点は神保町の古書店街と小川町のスポーツ用品店街を分かつ場所でもありますが、その交差点から神保町側の南に少し歩くと渋ーい外装の和菓子屋さんがひっそりと佇んでいるのが見つかります。

御菓子処 ささま、それがこのお店の名前です。

専門はお茶菓子でありまして、生菓子、干菓子を中心にクオリティの高い和菓子を取り揃えています。最中や季節のお菓子も人気で、オフェイス街が近いこともあってサラリーマンが贈呈用に、また女性会社員が自分用に買い求めにやってくる姿をよく見かけます。

私がささまを知ったのはもう5年前。その時から神保町の古書店街、とりわけ茶道具に強い悠久堂、洋書を取り揃えている源喜堂には足繁く通っていましたが、その時はたまに買い求めに行くだけでした。それに何とも店内が敷居が高そうに見えてしまい、行き渋ってしまったのです。

ささまの生菓子を欠かさずチェックするようになったのは最近の事。そのきっかけはここの生菓子を母が「日本一美味しい」と評したことでした。たまたま別冊太陽の和菓子歳時記という本にささまが載っているのを私は見て、買った生菓子を食べた母が絶品だと評したのです。それから毎月買ってきて欲しいという母の要請を受け度たびささまを訪れています。

生菓子の天下、というと私にとっては下諏訪の新鶴本店ですかね。それか先代のころの金沢・中島か。あと意外なところだと銀座・空也の生菓子も絶品です。私の見立てでは、ささまはそれらに劣らない総合力があると思います。



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(上から時計回りに、菜種、草包み、稚児桜)

ささまの生菓子の良さ。それは何を作らせても決して不味くはならないという確かさです。逆に言えば自分で作って旨いものだけを厳選してお店に置いている証左なのです。

ささまの生菓子を私の好きなクラシックの指揮者でたとえるなら、アメリカのクリーブランド交響楽団を率いたジョージ・セルにものすごく似ている気がします。セル様は何を振らせても失敗がない。そして実に明瞭で万人に親しみやすいアメリカ風なベートーベンやモーツァルト、ハイドン、ブラームスやリヒャルト・シュトラウスを示してくれました。実に多様なのに分かりやすい。そんなセルの芸術を、ふとささまの生菓子を食べていて思い出してしまいました。味も、音も、アートに通ず。

写真は3月の生菓子です。見た目としては派手派手しい色をあまり使わず、靄がかったような日本的な桃色や萌黄色を好む傾向にあるのではないでしょうか。中身の餡は白餡、つぶあん、こしあんとどれも実に癖のない、お抹茶には最適の味わいです。とりわけ最近の生菓子は味が濃くて苦手…という方には大変お勧めできます。

先ほど敷居が高そう、と書きましたが、生菓子は一つ300円ほど(虎屋は500円近く)。午後に行っても残っている確率は高いですし、けっこう仕事の息抜きにふらっとやってくる人が多いので全然そんなことはありません。

是非、御菓子処 ささま、神保町に御出での際はお立ち寄りください。